しぼりたてチャイナ

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香港「反逃亡犯条例200万人デモ」を実際に見に行ってみた 2019年 6月16日 ② 写真で見る香港市民デモの実態

 

前回に引き続いて、香港史上最大規模のデモ、6月16日の逃亡犯条例反対デモを見てきたレポートを書いていきます。

 

今回はデモの中で目撃したいろいろな出来事について、写真と一緒にお伝えします。現場の雰囲気が伝わるかと思います。

 

 

 

前回記事:

香港「反逃亡犯条例200万人デモ」レポート 2019年 6月16日 ① デモの参加人数 - しぼりたてチャイナ

 

 

 

 

暑さ

 

まずはこちら、

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開始から1時間半が経過した頃、目の前で2人の女性が暑さで座り込んでしまいました。

 

周囲のひとがうちわで扇いであげたり、冷涼グッズを手渡したりしていました。

 

それもそのはず、沖縄よりも南に位置する香港は連日のように蒸し暑く、2時半にスタートしたこの日のデモも、午後の西日がビルの隙間から強く差し込んでいました。これだけの人ごみの中にいると海風もふきこまず、ほぼ蒸し風呂状態になってしまいます。私も短時間だけ中に入ってみたのですが、むわっと蒸し暑く、みんな頭から汗がしたたり落ちているような状態でした。

 

人によっては熱さまシートやポケット扇風機などで涼を取っていましたが、あまりの人数で渋滞が起き、数十分も前に進めないこともざらにありましたので、体調が悪くなってしまう人が出てくるのも無理はありません。

 

当日の新聞『明報』によると、この日は合計で33人が体調不良により病院に運ばれたそうです。

 

写真の2人は10分ほどここで休んだ後に、列が動き出したのに合わせて歩き始めました。

 

 

一体感

 

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やはり暑さのためか、ベットに乗せられて運ばれてしまった女性がいました。写真を見るとわかるように、ベットが来るのに合わせてお互いに声を掛け合って、紅海が割れるように一瞬で道ができました。ベットが通り過ぎると、拍手が湧き上がります。ここまでよく頑張った、ということなのでしょう。

 

デモ開始から3時間近くが経過した頃、また列がぱかっと割れて道ができました。

 

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しばらく待っていると、数人の学生風の若者がこの道を駆け抜けて行きました。主催者側の学生なのでしょうか、彼らも同様に、拍手で見送られて行きます。

 

参加者同士お互いに気にかけあって、協力しあう姿に、香港市民の強力な一体感を感じました。

 

 

手話で抗議

 

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途中で手話で抗議している一団も見かけました。香港には香港手話という、大陸中国とは異なった手話が存在していて、これがそうなのかな、と少し興奮したのですが、定かではありません。

 

しかし、両手の親指を下に向けて高く掲げたり、大勢の人々の「撤回」のデモコールに合わせて、左手の中の物を右手でつかんで投げすてる、などといったジェスチャーは非常にわかりやすかったです。

 

 

 

花を手向ける人々

 

デモのゴール地点である立法院に向かう途中で、大勢の人がある場所に持ってきた白い花(種類はいろいろ)を積み上げているのを見かけました。

 

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後になってから知ったのですが、今回のデモの前日、15日の夜に、1人の抗議者がビルの作業足場に抗議の幕を貼ったのち、ここで転落死してしまいました。

 

今回、多くの参加者たちが白い花を手にデモに参加していましたが、転落死した人物への追悼の意味だったんですね。

 

主催者側が発表した16日のデモの参加人数、「200万1人」の「1人」とは、前日亡くなった彼のことだそうです。

 

 

歩道橋から

 

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様々なメディアでも使用されているこちらの光景ですが、私も歩道橋を渡ろうとした際に見かけて思わず圧倒されてしまいました。歩道橋の上から下の人々に向けてスマホのライトを振ると、下にいる人々も同じくスマホのライトで応えてくれます。

 

蒸し暑い人ごみと、なかなか進まない行列の中、たった2、3キロの道のりをここまで何時間かけて歩いてきたかわからない参加者を、歩道橋の上からライトで励まします。

 

すると、私の近くにいた女性がおもむろに「香港!加油!」と叫び始めました。

 

女性の「香港!」に合わせて、足元の数千人の人々が「加油!」と一斉に応えます。こちら側の数人の声が、数千の声になって帰ってくるのです。圧倒的でした。

 

女性は声が枯れるまで叫び続けました。叫ぶことができなくなったところで、歩道橋の上からは歓声が上がり、また下からは数千人の歓声がそれに応え、ビルの谷間のずっと向こうにまで波及して行きました。

 

 

ようやくたどり着いた立法院

 

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立法院前の芝生では、多くの人が座って休憩していたり、スクリーンに流される映像に見入っていたりしていました。

 

新聞によると、デモ行進の最後尾は、夜の11時、デモのスタートから8時間後になってからようやく立法院に到着したといいます。

 

この日はここで夜を明かした学生も大勢いたそうです。

 

 

 

街へ散ってゆく香港市民

 

ある日本の報道で見かけた、「香港市民は別に勝利に酔いしれるわけでもなく、ただ、淡々と街に帰って行った」という表現が非常に的を得ていると思います。

 

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立法院(画面奥)に到着した後、帰途につく香港市民


まさしく、勝利に陶酔することもなく、極度に興奮することもなく、ただ普段と同じような日曜日を、普段とちょっと違う過ごし方で終えた、さあ、帰ってご飯食べるぞ、という感じでした。何も特別な感じは伝わって来なかったです。気軽に参加して、気軽に帰って行ったという風でした。



 

今回のデモによって、香港行政トップの林鄭月娥は香港市民に対して謝罪をしました。

そして、香港政府は6月21日に逃亡犯条例の改正の停止を表明しました。

 

いったいこの事件の裏側でどんな大きな力が働いているのか、はっきりしたことは言えないのですが、現在飛ぶ鳥を落とす勢いの中国という国が、そう簡単に引き下がってしまうとも思えないので、なんだか不気味な感じがします。

 

政府がまだ条例の撤回を明言していないため、これから先もデモが計画されているそうです。