「中国人」の顔
みなさんが
「中国人」
と聞いて思い浮かべるのはどんな顔でしょうか。
なんとなく日本人より細目で、短髪で、背の高い男性でしょうか。
女性も日本人よりもどちらかというと少し韓国よりの、日本と韓国の中間といった顔立ちでしょうか。
実際はどうなんでしょうか。
正しくもあり、間違っているとも言えます。
というのも、中国国内各地で、場所によってあまりにも顔立ちが違うからです。
私はは中国に住んでしばらく経つのですが、
「典型的な中国人の顔」
という言い方がどれほどあてにならないことか、よく気付かされます。
出身地の見分け方。ユーはどこから?
司馬遼太郎は人の顔立ちを見て、その人がどこの地方の出身か言いあてることが得意だったと言います。
司馬さんはその著書、「街道をゆく」シリーズの中でも、何度か中国を訪問していて、中国でも何回かその特技を披露しています。
司馬さんがどうして中国人の顔立ちまでわかってしまうのか不思議なのですが、確かに中国人の顔つきは、各地方によって特徴があります。
いったいどんな特徴があるんでしょうか。
ものすごくざっくり言うと、中国北部ではモンゴル人や韓国人に似た顔つきで、まさに冒頭で紹介したようなイメージです。身長は総じて高いです。
そこから中国大陸を南へ下れば下るほど肌の色は濃くなり、顔立ちもどこか東南アジアの人々に似てきます。そして身長も低くなっていきます。
中国の西南部、四川省や重慶市のあたりでは、曇りや雨の日が圧倒的に多く、日焼けしないため、一般的に肌が白くキメが細かいと言われています。ですので美人の産地として有名です。
(秋田美人の原理と同じですね。私たちは白をもって美とする文化圏に属しています。たしかタイもそうです)
司馬遼太郎の『街道をゆく 中国・蜀と雲南のみち』には、四川人は丸顔で目がくりくりしていると描写されています。なるほど。確かに、私の重慶の友人一家はみんな丸顔で目が大きい。
日本人と顔立ちがよく似ているのは、中国北部と南部の中間あたり、長江流域の湖北省、安徽省、江西省、江蘇省、浙江省、上海の付近の人たちではないでしょうか。(いろいろと友達の顔を思い浮かべて見ると)この辺りの人々は、ほとんど日本人と見分けがつかないような気がします。
血縁的に、日本人と近い祖先を持っているのでしょうか。
中国大陸をさらにもっと西の方、新疆まで行くと、トルコ系やペルシャ系の顔立ちになります。ウイグル族やキルギス族やカザフ族などが多く暮らしている地域です。パッと見ると欧米人に見えるかもしれません。
欧米人といいますと、中国東北部のロシア国境付近の村には、少数ではありますが、ロシア族の人々が暮らしています。ロシア族の人たちは、欧米の、スラヴ系の顔つきをしています。
そして広大なチベット高原にはチベット族が暮らしています。アジア系の顔立ちですが鼻がスラッと高く、細くがっちりした体型で、皮膚は濃い色をしています。イケメンです。口数の少ない精悍なチベット人青年に日本人女性は弱いというのをどこかで聞いたことがあります。
これらの多様な人々をみんなひっくるめて、中国人と呼ぶのです。
中国は多民族国家
そもそも中国は多民族国家です。
日本の26倍(!)、960平方キロメートルの広大な土地に、56もの民族が暮らしています。(56というのはあくまで公式発表)
先ほど挙げたロシア族も、キルギス族も、みんな56の民族のうちのひとつです。
「中国人」という言葉でくくられる範囲というのは、実際はものすごく広いのです。
そのためか、中国では「中国語」、という言い方はほとんど使われません。
この言葉を中国で捉えるならば、「中国のことば」という意味になりますが、「中国のことば」というのでは、ほかの少数民族の言語も含まれてしまうため、もし、「中国語」という単語を使っていわゆる「漢語」だけを表すとなると、ほかの少数民族の言葉が中国の言葉ではないかのようなニュアンスが出てきてしまいます。
中国では、私たちが普段日本語で指す中国語を、「漢語」か「中文」、もしくは「普通話」と言い表します。英語だと「マンダリン」ですね。
現在はグローバル化の時代です。
中国国内でも、移住したり、違う出身地同士での結婚や、国際結婚なども当たり前になってきているため、これから先、司馬さんがやっていたような、顔立ちで出身地を判断するような技は通用しなくなってくるでしょう。
しかし「中国人」という言葉がとても多様な人々を指すことは、覚えておいたほうがいいと思います。
漢民族とはどんな民族なのかを知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
中国を10年間歩き回った男がいます。
わたしもわたしでいろいろと歩き回っています。